和歌山県を拠点にする山忠建設は、電線地中化の工事に注力している。東南海地震への備えなど、災害対策の観点から和歌山県では電線地中化を推進。通信インフラの強靭化をはじめ緊急輸送道路の確保を目的に長期的な工事を行っている。山忠建設が携わる和歌山県の現場を取材した。(北島圭)
和歌山県では災害対策の一環として電線地中化が急ピッチで進められている。具体的には緊急輸送道路(災害時に緊急車両の通行を確保するための道路)に指定されたルートを中心に電線を地中化。例えば和歌山市にある阪和自動車道の和歌山インターチェンジから和歌山県立医科大学附属病院や赤十字病院など県内の総合病院に通じる幹線道路を順次、地中化している。
和歌山県は災害の多い地域の一つである。例えば台風が本州に上陸する際、最初に襲来するのが同県にある潮岬だ。また東南海地震の備えも必要だ。南海トラフの東側に当たる紀伊半島沖から遠州灘にかけて周期的に発生する東南海地震は、マグニチュード8クラスの大地震になる可能性がある。
緊急輸送道路の電線地中化は国の方針に沿った営みでもある。2024年1月1日に発生した能登半島地震は記憶に新しいが、電柱倒壊などの影響で道路が使えなくなり、緊急輸送に難を来した。全国から能登半島に駆け付けた支援者が最初に行ったのは道路に倒れた電柱などを撤去することであり、その分、復旧活動に遅れが見られた。
とくに東南海地震では、津波による被害が想定されており、地域の人々は、緊急輸送道路を使って高台など逃げなければならない。こうした観点からも緊急輸送道路の災害対策は最重要課題であり、その一環として電線地中化が進められている。
こうした背景から山忠建設では、電線地中化に関連した工事案件が増えている。
楠本社長は「電線地中化は長期的に進められており、当社が携わる工事案件も当分は途切れることがないとみている」と話す。
私は6月22日(月)、和歌山県内で行われた電線共同溝(CCBOX)による電線地中化の工事を取材した。この工事では、道路の地下に管路を埋めて通信線を収容する。
現場は国道沿いにあり、当日は接続した管路同士がきちんとつながっているかを確認する性能試験、いわゆる「通線試験」が行われていた。
エンジニアはハンドホール内で作業を行うので、まずハンドホール内の酸素濃度を計測し、異常がないかを確認。異常がなければ中に入り、接続した管路にガスを送って、漏えいがないかを確かめる。漏えいがなければ、管路にヒモを通して、約100メートル先にある電柱に向けてエアで飛ばす。
そして、ヒモに管路用の試験棒(マンドリル)を取り付けて、管路の中を通し、管路が先から先までつながっているかを確認する。
「マンドリルを管路の中に入れて、引っ張ることで、つながっているかどうかを確認する。どこかで引っかかると、マンドリルは抜けないので、管路がきちんとつながっていないことがわかる。例えば道路のカーブがきつい箇所などは引っかかることがある。そうなると、もう一度、道路を掘り返して管路をつなぎ直さないといけない。大変な手間になるので、そういう意味で通線試験のときはとても緊張する」(楠本社長)。
管路をつなぎ直す際は引っかかりの箇所を特定するため事前に小型カメラを管路に入れて把握するという。
ちなみに同社が携わった工事で、通線できなかったケースはほぼ皆無だ。現場のエンジニアも入社以来、掘り返しの経験はないと話す。
楠本社長は「当社は創業以来、土木を生業にしており、代々引き継がれてきたノウハウがある」と述べる。
地中に管路を敷設するときは、道路のカーブ状況を調べながら、管路の角度を決めていく。管路の角度がポイントで、ここを見誤ると通線できなくなることがある。
そんな話をしていると「マンドリルが出てきました!」と向こう側のエンジニアが声をかけた。通線試験は無事成功だ。
この後は管路に通信線を入れていく。これで電柱にあったケーブルを地下に切り替えたことになるので、その後は一気に電柱を撤去することになる。
電線地中化の工事は息が長い。管路敷設工事は1日150メートルくらいのペースで進む。国道などは規模も大きいので管路敷設工事はしばらく続く。電柱撤去は、すべての工事が終了し、ケーブルの切り替えが完了したあとなので、数年先になるという。
同社の場合、現場工事は規模に合わせて4人―7人で展開する。国道沿いの工事なので、交通事故と騒音対策が安全管理のポイントになる。通線試験は昼間に行われるが、道路工事は夜間に行われることが多いので、とくに配慮している。
楠本社長は「電線地中化は、とても手間のかかる工事だが、一方で通信インフラが強化され、重要回線が途絶する心配はほとんどなくなる。災害で管路が曲がったとしても、へし折られることさえなければ回線は守られ通信はつながり続ける。また電柱がなくなれば災害時の倒壊もなくなり、道路が利用できなくなる懸念も軽減される。われわれは地域を守るための非常に重要な仕事に携わっていると考えている」と話す。
(電経新聞 第3682号 1面)